彫刻神棚祈り雲にロゴや名前を入れない二つの理由

ロゴや落款を裏面に入れない理由
「商品にブランドのロゴなどを入れないんですか」といった質問を受けたことがあります。
作り手がデザインから、制作、販売まで一貫して行う手工芸品であれば、ブランド名や作者の名前を入れるのは一般的だと思います。
しかし、祈り雲に名入れをすることはありません。
理由は主に二つ。

1、神棚であるから。
2.形で祈り雲だとわかるから。

三つのサイズの祈り雲


五つ渦と八つ渦の裏面にも落款がない

1・神棚であるから
解釈は色々あって良いと思いますが、
作った物に名を入れるということ事は、
「私がこれを作りました」と言いたい作り手のエゴの表れだと個人的には思います。
もちろん、エゴが悪いと言いたいのではなく、それが表れて良い場所、悪い場所というのがあります。

日本人に説明は不要ですが、神棚は清くなくてはいけません。
清くあるべき場所には、汚いものはできるだけ除きたいものです。

人は、身体を洗い清め、きれいな装いをし、礼儀正しくすれば、清く見えるものですが、どれだけ表面をきれいにしても、内面にあるエゴを拭い去ることはできません。
神棚を作るのも、そんな人間ですので、
「良いものができた」「納得いくものができた」
そう思えたら、そこに何かしらの自分の痕跡を残したい、という心理が働くのは当然です。
しかし、同時に感じる微かな違和感に敏感であることも、文化に根差したものを作る人間に不可欠な感性です。
神棚である以上、そこに作り手のくだらないエゴは必要ありません。


2・形で祈り雲とわかるから
江戸時代以前の美術工芸品を集めた作品集をめくると、「作者不詳」と書かれた作品を多く見かけます。
作品に落款(署名や印)が入っていないため、作品の所有者が変わった時などに作者が分からなくなった作品です。
しかし、誰が作ったのか分からなくても、それらの作品は後世まで大切にされている。
これは、作品そのものの力だと思います。

職人としては、そんなものを目指して作っていますので、
なるべく作ったものには名前やロゴを入れていません。
祈り雲に関しては全く入れません。

では、どうやって祈り雲が祈り雲であることを証明できるのか?と問われますと、
それは、雲形の神棚として唯一無二である、という事です。
祈り雲の形は「生きた形」を意識し、静止することのない雲の動きを、複雑な曲線の構成によって表現しています。

実のところ、もっと簡単な形にするという選択肢もありました。
ですが、それでは、形は動きを失い、きれいに仕上がってはいるけれども、ありふれた工芸品の一つとなっていたでしょう。
ひと目見て、この雲形神棚は祈り雲だ、となる理由は、そのフォルムにあって、それを仕上げるには、技術的難しさがありますが、出来上がった形それ自体が祈り雲である証明となっています。

現在では住宅事情の変化に伴い、コンパクトで設置が簡単な「モダン神棚」が広く普及するとともに、モダン神棚の一つ分野として、祈り雲のような「雲形神棚」が認知されるようになり、多種多様なものが販売されています。
その数ある雲形神棚の中に祈り雲と似た形がないのは、前述のように、複雑な形状と動きあるフォルムを削り出すことが、大変であるためです。
鑿が使えれば、一個や二個作ることはできますが、商品として何個も作るとなると、「とてもやりたくない」と思える形なのです。

ですので、皆さんが訪れた知人の家の壁に、また、ふらっと立ち寄った飲食店の片隅に雲形神棚を見かけた時、
そこに「祈り雲」の名前が見当たらなくても、形が祈り雲であれば、それは間違いなく祈り雲です。

というわけで、神棚であることと、形で祈り雲とわかる、という理由から祈り雲にロゴや名前を入れていません。


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