職人と言葉について


職人は×?クリエイターは〇?

むかし、
「職人になるなクリエイターであれ」
みたいな指摘を受けたことがあります。
始めこの言葉の意味することが
全くわかりませんでした。

最近、雑誌でそれと似たようなことが
書かれた記事を読んで、
職人=決まった事だけやる創造的でない人。
クリエーター=創造的な人。
という言葉の認識がある事を知りました。

職人といっても幅広いのですが、
繰り返し作業が多い印象のせいか
一般的に、そういう捉え方が
され始めているなぁと感じます。

職人=創造的でない?

私の修行時代、工房の奥で親方は、
よく和紙に絵(図案)を描いていました。
その図案に至るまでのアイデアを
書きためたスケッチブックが、
工房の隅に山のように
積みあがっていたのを覚えています。

歌舞伎と同じで、伝統という
ある程度のフォーマットはあっても、
時代とともに新しさは加えられたり、
一見地味ではあるけれど、
創造性を求められるのが職人仕事です。

そのような環境にいたので、
職人=技術性の高い仕事をするクリエーター
と思っていました。
でも、この言葉の解釈って、
別に特別ではありませんよね?
元々は、みんなが持っていた
職人のイメージだと思います。

木彫だけでなく、
花火職人や寿司職人にしても
「職人」と言われる所以は
そういったところにあります。

「職人」と「クリエーター」、
いずれにしても、
創造的な要素を持っているわけでが、
冒頭のように最近は、ひとくくりに
「職人=クリエイティブではない」という
言葉の定義のもとで、
ものが語られているシーンを
よく見かけるようになりました。

違う表現ではだめなのか?

もちろん職人のタイプはいろいろですし、
職人全てがクリエイティブだと
言いたいのではありません。
ただ、冒頭の指摘のような、
言われた事や決まった事しか
できないことを戒めるのであれば、
「サラリーマンになるなクリエーターであれ」
のほうがまだ適切だと思うのですが、
そうならないのは、やはり発言する人も
日本という世界屈指のサラリーマン社会で
敵を多く作ることを恐れている、
という事なんでしょう。

決まった事、言われた事しかできない人を
一言で表す言葉があると
便利なのはわかります。しかし、
そこに「職人」を当てるのは少々強引ですし、
言葉の定義には文化が宿っているので、
発言力のある人には気を付けてほしいし、
自分も気をつけたいものです。

そんなことを最近思いました。